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冷血な獣
第11章 本心

「椿……お前ら何をしてるんだ」


低く不機嫌な、怒りを纏った声。

これって……。


「灯さん、どうしたの?」


椿さんが明るく質問すると、太腿に座ったままドキッとする。

そのままゆっくりと私達へ近付き、ソファの側で止む足音。


「お前まで……佐伯に何をしてると聞いてるんだ」
「何って、それ聞くの?」


ピリピリした雰囲気の中、身動きが取れず、
押し黙って二人の会話を聞く。


「言っとくけど、妃南ちゃんもうヤル気満々だよ。早くしたいって言ってるんだから、邪魔しないでよ」


わざと怒りを煽るかの様に、クスッと笑う椿さん。
その瞳と視線が合わさった瞬間、龍河さんから話し掛けられた。


「こら佐伯! 何をしてる!」
「……龍河さん……」


……何をしてる?

何をしてるんだっけ……?


「別に、龍河さんには関係ない事です……」
「……何だと?」


視線も合わさず私が溢した言葉に、龍河さんの眉がつり上がる。


「ほらね~。悪いけど、灯さん邪魔だから出てってよ」
「邪魔……?」
「そこで見てても良いよ。俺達がするの」


ぐいっと、椿さんの言葉を遮る様に、突然腕を引っ張られた。


「……いい加減にしろ。佐伯、来い。行くぞ」
「嫌です……私を魔女呼ばわりする人となんか行きません……」
「くっ……」


悔しげに歯を噛み締める龍河さん。
それでも再び腕を引っ張り、私へ命令する。


「良いから来い!」
「嫌です……」
「このっ……」


本心なのか、本心じゃないのか、自分でも分からない。
ただ、何故か龍河さんが必死そうに見えた。


「……だから! 嫌だから! やめてくれ!」
「嫌って、何でですか……」


腕を掴む力が強く、腕に赤く跡がつく。


「やはり俺は……どう考えたってお前に誘惑されてしまう」


答えると、すぐ分かった様に言い直す。


「いや、誘惑じゃない。この気持ちが何なのかは自分でももうよく分かっている」


そのまま更に強く腕を引っ張り、私を椿さんから引き離す龍河さん。


「結婚したいぐらいお前を想ってるんだ……だから、椿とするな!」


その言葉にポカンとする私。
すると龍河さんは、落ちているTシャツを拾い、私へ急いで着せた。





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