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冷血な獣
第12章 強敵
* * *
1週間後。
あれから平和な日々が続き、
椿さんの事も忘れかけていた。
屋敷で起きた事も、夢にさえ感じる。
このまま何も起きないで欲しい……。
そんな私の願いが無情にかき消されてしまう日が来るなんて、思いもしなかった。
「あれ? 妃南? だよね?」
朝早く民宿の温泉から出て、部屋へ戻る途中。
廊下ですれ違った人に声を掛けられ、その人物へ視線を向けると、私は目を丸くした。
「りょう君? 何でここにいるの!?」
浴衣姿のりょう君も、私を不思議そうに見つめ、
「何でって、友達と旅行で来てんの。……いやぁ、バーで会って以来また会うなんてね」
花のような笑顔を咲かせる。
本当、龍河さんのお見合いの時に会って以来だ…。
また会うなんて、ビックリした。
「妃南は? 彼氏と来てんの?」
「うん」
彼氏。
その響きにドキッとしながら、少し照れてしまう。
「そっか。上手く言ってんだ。良かったな」
笑顔で頭を撫でられると、小さく頷いた。