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冷血な獣
第12章 強敵
「おい……? 妃南?」
更に強くぎゅっと抱き付いて、龍河さんの胸に顔を埋めた。
するとそんな私の頭を撫で、ゴホッと咳き込み、龍河さんは話し出す。
「…さっきの男と何を話してたんだ?」
「何を…? それは……」
まずい。
結婚の約束したとか、初めてのキスをしたとか。
そういう話、しても良いのだろうか?
「幼稚園の頃の話ですよ!」
「幼稚園の頃?」
「どうやら私、幼稚園の頃にりょう君と結婚の約束とかキスをしたみたいで。子供のする事だし、お互い本気なわけないですけど……」
続けてあはは、と笑う。
そして顔を上げて龍河さんの顔を見た瞬間、
ぶちギレている事に気付く。
「…龍河さん?」
撫でていた頭から手を離し、そのまま私に背中を向けると、龍河さんは小さく呟いた。
「結婚……。キス……。そうか」
心無し、哀愁が漂う背中。
明らかに見て分かるぐらい、元気もない。
まさか。
「気にしましたか……?」
「気にする? 何でだ?」
「だって何だか元気がないですよ」
「気にしてなどいない。大丈夫だから……」
ぼんやりと返事をする龍河さんを見て、私は言葉を失い、掛ける言葉が見つからなかった。