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冷血な獣
第13章 躾
「…よく龍河さんが執事なんてしましたね…」
素直に従う人じゃないのに。
そう私が思っていると、鷺沼さんが意味深に呟いた。
「まあ。色々と……」
…色々と?色々って何だろう。気になる。
「それはさておき、私達も明日屋敷に帰ります。今日はもうゆっくり休んでください」
「…分かりました」
明日、龍河さんに会える。
それだけが今の救いだ……。
「部屋はこの部屋の隣を使ってください」
鷺沼さんからそう続けて言われると、私は頷いた。
「はい……」
「……」
そんな私を無言で見つめてくる。
…何?どうしたんだろう。
「…一緒に寝ますか?」
不思議に思っていた私へ、唐突に鷺沼さんが質問してくるとは思わなかった。
「えっ!?」
「見知らぬ土地で一人寝るなんて寂しいでしょう?」
「別に寂しくなんか……」
真顔だし。冗談なのか本気なのか、分かりにくい……。
こんな冗談を言う人だったっけ?
「あの、私は、龍河さんが……」
恥ずかしさと一緒に頭が真っ白になり、面白そうに鷺沼さんがクスッと笑うまで、からかわれているということに気付かなかった。
「冗談ですよ。おやすみなさい」
「…おやすみなさい…」
明日からまたお屋敷に後戻りするというのに、強い不安が込み上げてくる。
それは部屋から鷺沼さんが出ていった後も、濃い染みの様に消えることはなかった。