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冷血な獣
第13章 躾
* * *
「昼食の時間になるまで、ここにいて下さい。時間になったら迎えにきます」
案内した部屋でそう言うと、鷺沼さんは去っていった。久しぶりのお屋敷は、初めて連れてこられた時から何も変わらない。部屋に入った瞬間襲ってくる緊張も、懐かしささえ覚える。
「いてくださいと言われても……何しよう」
退屈で部屋の端にあるベッドに腰掛けると、壁時計を見た。…まだ10時。昼食まで二時間もある。
部屋にはテレビもなければ、小説や雑誌だってない。あるのはシャワールームと、ベッドとソファ。それに窓……。
「……」
逃げちゃおうかな。
突拍子もないことを考えつき、窓へ視線を送った。二階だけど、カーテンを手綱にすれば降りられるかもしれない……。
「でも見つかったら……」
鷺沼さんなら、何されるか分からない。逃げるにも、決死の覚悟がいる。
「よし……」
ゆっくりと立ち上がり、そのまま窓へ近付いていった。…だが、ドアの方から物音が聞こえてくると、背筋を凍り付かせた。
「…誰ですか?鷺沼さん?」
タイミングが悪い。でも逃げ出すところを見られる前で良かった……。
視線をドアの方へ向ける。そんな私の目に飛び込んできたのは、
「妃南」
執事服姿の龍河さんだった。