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冷血な獣
第15章 黒い渦
* * *
「明日は妃南、予定あるか?」
キッチンで夕食の準備をしていると、龍河さんから質問されて一瞬手を止めた。あれからすぐにお腹が減ったと言われ、私は料理を始め、龍河さんはソファに座りパソコンで新しい就職先の仕事を始めていた最中。
唐突に聞かれると、不思議に思ってしまう。
「どうしてですか?」
「二人で何処か出掛けないか?」
「良いですけど……」
仕事があるから話し掛けるなと、自分で言っていたのに。そんな事を考える暇はあるの?
返事をしながら、私は再び料理の手を動かし始めた。
「何処か行きたいところはあるか?」
「龍河さんといれるなら何処でも……」
「……」
急に黙り込む龍河さん。不思議そうに私を見て、一体どうしたんだというんだろう。
「それをあざとくなく言えるお前が怖い」
「……はい?」
「女は皆狙って言うだろ?龍河さん素敵!とか、龍河さんになら抱かれても良いです~とか」
「そんな事を今まで言われてきたんですか……」
何故そんな事を急に言い出したのかは分からないものの、聞いて呆れ果てる。真顔で話しているから本当の事なんだろう。少しだけ周りの女子達に嫉妬して、魚を捌く包丁に目一杯力を込めた。