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冷血な獣
第15章 黒い渦

「妃南は……正直だな。まっすぐで、俺に媚びない」

「龍河さんに媚びてどうするんですか?」


一生懸命魚をおろしていると、少しして後ろに人の気配を感じる。と同時に、目の前の魚とまな板に出来た人の影。


「俺はお前に媚びてるぞ」

「嘘つかないで下さい。何処が媚びてるんですか。…っていうか、今危ないんで離れて下さい。」


お腹の前に両手を回されて、ひやひやした。それでも離れない両手。というか更に力が強くなり、ぎゅっと抱き締められる。


「相手をして貰う為に毎日媚びてるんだ」

「…本当に危ないですから!魚の代わりに捌かれたいんですか!?」


ハラハラしつつも、うなじに口付けられると体から力が抜けてしまう。包丁から手を離し、繰り返される口付けにそのまま声を押し殺しながら身悶えた。



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