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冷血な獣
第15章 黒い渦
「女装ってさ、自分の気持ちとも連動してて。灯さんに失恋しちゃったから別女になる必要ないかなって」
「…本当にそれだけか?」
「本当に決まってるじゃん!あ、灯さん、俺が妃南の事狙ってるって思ってるんでしょ!」
「う……」
怪しむ様に椿さんを睨んでいた龍河さんは、椿さんから指を差されると罰が悪そうに顔をしかめる。
「分かるよ~その気持ち。俺美形だから男のままだと灯さんにも勝っちゃうもんね~」
「妃南は俺がタイプだ……」
「女心は秋の空って知らないの?タイプなんてすぐ変わっちゃうよ!」
「……」
そして椿さんの話を聞いている内、段々と口数が減り、無言で私の方へ視線を向けた。椿さんの話を真に受けてしまっているのがみてとれる。そんなわけないのだが。
「ところで、椿さんはCAでしたよね?いつ働いてるんですか?」
「あー、あれ結構前に辞めたよ」
「えっ!?辞めてたんですか!?」
お見合いの時に仕事はCAだと言っていたのを覚えていたけど。まさか辞めていたとは……。
「じゃあ、今は何を……?あ、もしかして社長の会社を継ぐんですか?」
「まさかー。だって俺、次男だし。上に兄貴がいるし。跡継ぎは兄貴がするよ、多分」
私の質問に答えると、椿さんはのんびりと珈琲を飲んだ。