この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
冷血な獣
第15章 黒い渦
* * *
「妃南!これが俺の兄貴だよ!」
翌日。本当にお兄さんと一緒に椿さんは部屋へ来ると、颯爽と上がり込んだ。まさかこんなすぐとは思わず、私は驚きながらもリビングで涼太さんへ挨拶する。
「はじめまして。佐伯妃南です。」
「どうも……和仁涼太です……。」
お兄さんの涼太さんは、椿さんの言っていた通り真面目そうで大人しく、分厚いレンズの眼鏡を掛け、猫背で声が小さい。
義理の兄弟だと言っていたから顔は椿さんと似ていないのだろうけど、伸ばされた前髪のせいで顔もよく見る事が出来ず、私はじっくりと見つめてしまった。
「……あの、何ですか?」
「いや、涼太さんの顔、誰かに似ているなと思いまして」
「そうですか……?気のせいじゃ……」
「そうですね!多分気のせいです!」
何となく見たことがある気がしたけど多分気のせい!
「ねー、ところで今日灯さんは?」
「新しいスーツを買いに出掛けてます。明日から仕事なので」
私が質問に答えると不服そうに唇を尖らせ、椿さんはソファに座る。
すると涼太さんも遠慮がちに頭を下げて、その隣に座った。