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冷血な獣
第15章 黒い渦
じゃあ何で、龍河さんからタバコの匂いがするの?
「……どうした?妃南」
私が急に行為を止め龍河さんの体を引き離すと、龍河さんは不思議そうに尋ねた。そんな龍河さんの前に座り込み、私は真剣に質問する。
「龍河さん、タバコ吸ってるんですか?」
「それは……」
私の言葉を聞いた途端、一瞬目を丸くして口ごもる。しかしすぐに龍河さんは答えた。
「……最近だ。吸い始めたのは」
「やっぱり!どうしたんですか?急に」
別にタバコを否定するつもりはない。だけど何が理由で、龍河さんはタバコを吸い始めたんだろう。まさか私との同棲が原因で……?
「元々若い時に吸ってたんだが、こないだの面接の時に社長から一本貰って吸ったら、止まらなくなったんだ……」
「そうだったんですか」
困った様に私から目をそらす龍河さんを、目をぱちくりと瞬きさせながら見た。
大体一度禁煙した後にまた吸い始める方が、やめにくいと聞く。けどまさか龍河さんが?……どうしたら良いの。
「妃南には気付かれないようにベランダで吸ってたんだが、やっぱり分かるか?」
「う……」
「妃南……?」
突然口を掌で押さえる私に、不思議そうな視線を向ける。
「どうした?大丈夫か?具合でも悪いのか……」
どうしよう。私……。
「……龍河さん、実は私、タバコアレルギーなんです」
「何?タバコアレルギー……?」
「タバコの煙を吸うと頭痛や吐き気がして、体が痒くなるんです。だから……」
段々痒みが出てくる両腕を抱きながら、私ははっきりと断言する。
「龍河さんに近付けません……!」