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冷血な獣
第16章 飼い猫

「何で?冗談だよね?もしかして子供の頃の約束とか信じてるの?」

プロポーズも、誓約書も、全部覚えてないよ。
屋敷に連れて来られるまでに思い出を聞かされたけど、昼ドラをはまって見てた事しか覚えてなかった……。

「まさか……違うよね?りょう君」

「俺が今まで一度も彼女作った事無いって言ったら?」

無表情でじっと私を見て、真剣に私が話すのを待っている。そんなわけ無いけど、まさか……。

「……ないの?」

モテそうだもん。絶対、彼女の一人や二人はいた筈だ。

「りょう君……」

真剣な雰囲気に飲まれ、緊張しながらりょう君を見つめた。けど、りょう君の話を聞くと、更に息を飲んだ。

「無いよ。妃南と付き合いたかったから。妃南、俺はずっと本気で子供の頃の約束を信じてたんだよ」

……嘘だ。そんなピュアボーイが、この世にいるわけない。これは何かの策略……。

「今日つれて来たのも本当はこれ書かせる為。あ、鷺沼の彼女と結婚させられそうなのは本当だけど」

唐突に腕を引っ張られて、私は目を見開いた。

「何するの!?ちょっと待って!」

歩き出したりょう君が向かっているのは、部屋のベッドの方。そんな変な事、する人には見えないけど。

「ちょっと!」

心配しながらベッドの前に連れていかれると、そのままベッドへ押し倒される体。

「えっ……」

まさか……。そう思っている内に、上へ覆い被さられた。

「婚姻届書かないと、何するかわかんないよ?」

冷血な瞳。低い声。やっぱり私の知ってるりょう君じゃない。私の知ってるりょう君は、こんなことしない。

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