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冷血な獣
第16章 飼い猫
「何でかな。何でこうなっちゃったんだろう、俺」
「……大丈夫?」
「自分の頭がおかしいのは知ってる。でも、俺にとって妃南は天使だった。優しくて、癒されて……」
頑張り過ぎ。目を潤ませるりょう君を見て、そんな言葉が思い浮かぶ。もしかしたら周りの期待に答えようと、無理していたのかもしれない。だから疲れて、癒してくれる存在が欲しかったのかも。その時にちょうど良く、誓約書を見つけて……。
だからこれは、きっと恋じゃない。恋じゃなくて、これは。
「りょう君、これは書けないよ。私には好きな人がいるし、第一りょう君を癒せない」
穏やかに話すと、そのまま優しく続ける。
「りょう君はりょう君に合う人を見つけて。ちょうど良く私を思い出したんだろうけど、本当に気が合って好きになる人が見つかる筈だよ」
「何言ってんの?だから俺は妃南が好きだって……」
驚いた様にりょう君が返事を返してくると、困った様に笑いかけた。