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冷血な獣
第17章 花嫁
「無知な人間は、知っている人間よりも知りたがるんですよ。全部、知りたくなる。そして、誰よりも非情です」
でもこの話とこの状況、どう関係があるんだろうか……。
唇を塞さがれたまま疑問に思うと、漸く龍河さんが唇と両手を離した。
「すまない。妃南……驚くと思うが、聞いてくれるか?」
申し訳なさそうに私を見つめ、そのまま続ける。
「初めから俺は涼太の事を知ってた」
「初めから……?初めからって、いつからですか?」
「酔ったふりをして妃南を俺の部屋へ連れ込み、抱いた時からだ」
……意味が分からない。龍河さんは何を言ってるんだろう。
「非情だと責めてくれて良い。俺が妃南を彼女にしたのは、全部仕事の為だった。涼太が妃南を想っている事を知り、利用したんだ」
全部嘘だよね。衝撃的すぎて、心も頭もついていけない。
「涼太が和仁の跡を継ぐと知り、弱味が必要だったんだ。その弱味が妃南……お前なんだ」
「ど、どうして弱味なんか……」
「狙いは、和仁の社長の座だ」
「社長……?」
和仁の社長になる為に、私に近付いたの……?
全部嘘だったの?私を騙したの?
呆然とする私とは違い、龍河さんは冷血な瞳で話す。
「しかしな、続きがある。俺は妃南が好きなんだ……今日の結納も……」
その話を遮る様にして、私は龍河さんの体を押し退けた。