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冷血な獣
第6章 振り向かせたい
* * *
会議室には誰もいなかった。
龍河さんに続いて中へ入ると、こちらを振り向きながら立ち止まった龍河さんの顔を静かに見つめる。
普段と変わらずクールな表情。
だけど少し深刻そうに感じるのは、何故だろう。
「悪いが、俺と別れてくれないか?」
その理由は、龍河さんが話すと分かった。
申し訳無いという気持ちが、表情に滲み出ていたんだろう。
それが反対に私の心を締め付ける。
「どうしたんですか……? どうして急に……」
いつかこうなるかもしれないと、薄々感じていた。
というか今までの事があり得なさ過ぎて、龍河さんと付き合っている実感がなかった。
ふられて当然。そもそも龍河さんの恋人になれた事自体、奇跡なんだから。
「佐伯と別れたいから別れる」
はっきりとした口調で質問に答える龍河さん。
その目は冷たく、何を考えているのか全くよめない。
「そう、ですか……」
「すまなかった。無理に俺の恋人にして。もう君は、自由になって良い」
龍河さんが話すと、会議室には壁に掛けられた時計の秒針の音だけ響く。