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冷血な獣
第6章 振り向かせたい
「自由でしたよ。今までも……」
「そうか」
何が言いたいんだろう、私。
引き止めるつもりなら、もっとすがりつかないと。
「今まで、ありがとうございました……」
どうしてこんな時まで律儀にお辞儀しちゃうんだろう。
私結局は、何度か抱かれただけ。
好きの一言も言って貰えなかった……。
「では、仕事に戻ります」
「佐伯」
「何でしょう?」
ドアの方へ歩き出そうとすると、呼び止められて。
そのままじっと龍河さんの顔を見ると、龍河さんが申し訳無さそうに私から目をそらした。
「すまない。俺は君の事を愛したかった」
その言葉が龍河さんの気持ち全てを、物語っている様な気がした。