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冷血な獣
第7章 振り向かない
「……兎に角、もう俺に深く関わるな」
寄りかかっていた窓から離れると、ドアに向かって歩き始める。
「ちょっと待ってください……」
まだ話は終わってない。
言いたいことの半分も言えてないのに。
「龍河さん……!」
急いで後を追おうと、振り返る。
そして龍河さんの腕を掴もうとした時、何かがひらりと宙を舞いながら床へ落ちた。
「……何?」
それは、一枚の白い封筒。
拾って見てみると、表に縦書きで何か文字が書いてあった。
「それは……!」
「“退職届”……? えっ、龍河さん会社辞めるんですか!?」
「返せ!」
文字を読むと、すぐに龍河さんから封筒を奪われる。
凄く慌てている龍河さん。
こんな龍河さん、初めて見た……。
「龍河さん、どうして会社辞めるんですか……?」
不安になりながら、尋ねた。
するとすぐに龍河さんから返事が返ってくる。
「辞めるんじゃない。事実上のクビだ」
「クビ? ……クビ!? って、どうしてですか!」
うちの会社にとって、龍河さんは絶対必要な人材なのに。
クビなんて絶対あり得ない。
「……佐伯には関係のない話だ」
龍河さんが封筒をスーツの胸ポケットに仕舞いながら冷たく言い放っても、私は負けじと話を続けた。