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冷血な獣
第7章 振り向かない
* * *
そのまま部屋へ向かうと、ドアを開けて出迎えた龍河さんに続いて、リビングへ入る。
ティーシャツ、ジーパン姿で髪を下ろした龍河さんは、不機嫌そうに私へ尋ねる。
「どうして来た?」
「ごめんなさい……龍河さんを一人にしたくなくて」
「同情したのか? 次の仕事もろくに決まらない俺に」
「それは龍河さんのせいじゃないですよね!?」
目の前に立った龍河さんを見ながら聞き返すと、冷たく睨まれた。
「……全部聞いたのか?」
「はい。……龍河さん、結婚するんですか?」
したくない質問。
龍河さんが別の人と結婚してしまうと考えるだけで、胸がえぐられる。
龍河さんからの返事を聞くまで、この世の終わりにいる様な感覚だった。
「結婚はしない。俺の将来は自分で選ぶ」
「……本当ですか?」
ほっとしている自分がいた。
だからか頬が緩んでいる事にも気付かず、龍河さんから聞かれるとハッとする。
「嬉しいのか?」
「いえ、別に……」