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第8章 嫉妬

……どういう事だろう。
退去日を変更されているって。
代理人って誰……？

そう奇妙に思っていると、龍河さんの言葉が耳に入った。

『代理人が鷺沼(さぎぬま)になっているな』
『鷺沼さん……？ それって誰ですか？』

退去届を見る龍河さんへ、質問する。
すると、

『和仁(わに)社長の秘書だ』

龍河さんは私へ視線を変えながら答えた。

『和仁社長って、取引先の……』
『ああ、俺が娘と見合いした例の社長だ。その秘書が代理で退去日の変更をした様だ』
『どうしてそんな事を……』

話を聞きながら胸騒ぎがした。
同じく龍河さんも異常な事態だと思ったのか、

『脅しだろう。それか、自分の言いなりにならない俺への報復かもな』

そう淡々と話す。
口調は普段と変わらないけど、退去届を真剣に見る瞳からは、怒りが伝わってきた。