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冷血な獣
第8章 嫉妬

『どうするんですか……? 新しい部屋って、もう契約してるんですか?』

急に今日退去して、住む部屋はあるんだろうか。
龍河さんの事だから、次の部屋は既に契約していると思うけど。

『新しい部屋の入居日は1カ月後だ。今日退去すると、1カ月住む場所が無いな』

……何処まで龍河さんは冷静なんだろう。
こんな状況でも全く慌てないし、困っている様にも見えない。
それよりも困難を切り開こうとする。

『退去日は延長出来ないのか?』
『すいません。もう次の入居者が決まってまして……。退去の立ち会いで不動産屋もさっきからエントランスで待ってます……』
『そうか……』

遠慮がちな大家へ、龍河さんは頷く。

『龍河さん、やっぱり私の部屋で……』

しかし続けて恐る恐る話し掛ける私には、きっぱりと言い放った。

『いやだ』
『なっ……そんな事を言ってる場合じゃないでしょう! 明日から住む場所が無いんですよ!?』
『そうだとしても、お前の部屋にだけは住みたくない』
『本当に、頑固ですね!』

プイッと私から顔を背ける龍河さんへ、強い口調で言い返す。

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