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冷血な獣
第2章 冷血人間の彼女

* * *

リビングの光景を目の当たりにすると、すぐに寝室から出た事を後悔した。足を組んでソファに座っている龍河さんは、私に気付くと私の方を振り返る。

「おはよう、妃南」

まさかの名前呼び! …いや。そうじゃなくて。

「龍河さん…昨日の事覚えてるんですか?」

お酒に相当酔っていた筈。だから全部覚えていないよね? 全部、なかった事に出来るよね…?

「覚えているに決まってるだろ。俺は酒に溺れん。今まで酔った事はない」
「いや、昨日酔ってたじゃないですか!」
「昨日…?」
「Barの前で酔ったから、マンションまで連れて帰ってくれって頼んだでしょう!」
「ああ…あれか」

考え事をするように顎を掴むと、龍河さんは淡々と言い放つ。

「あれは妃南を部屋に連れ込む為の嘘」
「…嘘?」
「何だ。信じたのか? あんな手に引っかかるなんて、お前幼稚だな」

微塵も笑わない瞳で冷たく見つめられると、私はソファの後ろに立ったまま唖然とした。
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