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飼っていたペットに飼われています。
第60章 彼の優しさ(サキ目線)
「はぁ…。」
「お姉さん悩み事? 俺と遊べばすぐ忘れられるよ?」
 思わずため息をついたサキの横に気づけばホストのような若い男が座っていた。
 スイに見つけて貰いやすいようにと、通りに面したガラス張りのカウンター席に座っていたことが仇になってしまったらしい。
「…結構です。」
 こんな所スイに見られたら大変だと思い慌てて背を向けるが、男はサキの肩に湿った手をかけながら、
「冷たいなぁ〜、ねえ、そんなにおっぱい大きいと肩凝るでしょ? 揉んであげる。」
 と粘着く声で耳元へ囁いてくる。
「やめてください!」
 コンプレックスを指摘されて思わず泣きそうになりながら体を捩ってそう言うと、興奮した男は更に顔を近づけてきた。
「うわぁ…! 嫌がる顔もほんと可愛いね。何カップあるのかなぁ? 俺んちで全部見せてよ…。」
「ほ、本当に…、警察…呼びますよ…!」

 店員さんはカウンターの奥にいるようで誰も出てこない。払いのけようとする手さえもギュッと掴まれて怖くて涙が零れそうになったとき、店内に響きわたる『ドンッ…!』という鈍い音が正面から鳴った。
 見るとガラスを挟んで長身の男がすごい顔でこちらを見下ろしている。
 端正な顔立ちが、よりその怖さを際立たせていた。
 ガラス越しに動かした口の形は多分、
「コロス」
 だったと思う。店内に入って逃げようとする男の胸ぐらを掴むスイを、慌てて押さえたサキの手を取ったまま、痛いくらいに引っ張って無言で駐車場まで行き助手席に押し込まれた。
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