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飼っていたペットに飼われています。
第60章 彼の優しさ(サキ目線)
 運転席に乗り込んでも黙ったままのスイに、私は必死に謝った。
「ごめんね…。スイ、ごめんなさい…。私ぼーっとしてて、隣に人が来たのも気づけなかった。」
「…何考えてたら、そこまでぼんやりできるんだよ。」
「…スイのこと。スイのこと考えてたら、つい…。ごめんね。」
「…ッ! お前なぁ…‼」
 高木さんの奥さまに言われたアドバイスを思い出し、正直に答えたのにスイはすごく怒った顔でこちらに身を乗り出して近づいてくる。
 視界が回って自分の上にスイが見えた時、シートが倒されたんだと理解した。
「いい加減にしろ…! わざとやってんだろ‼」
 すごく辛そうな顔で上からサキに叫ぶ。
「そんなつもりじゃ…。ごめん、ごめんなさい…。」
「俺だってな、ずっとずっと我慢してんだぞ! もう、毎日お前の顔見るのも苦しいくらいなんだよ…。」
 そう言ってサキの肩のあたりに額をつけて項垂れ、動かなくなってしまった。
 スイにこんな顔をさせてしまった事が申し訳なくて、悲しくて涙が出てきた。
「ごめん…。ずっと、苦しんでたの…?」
「…そうだよ!」
「毎日?」
「…ああ!」
「だから…、ずっと離れて寝てるの?」
「…当たり前だろ! お前を傷つけないにはそれしかないだろ!」
 そう言ってスイは息を吐いて体を起こし、私のシートを元に戻すと、
「ほら、俺は結局こうやってサキを泣かせるからダメなんだろ。」
 と小さく呟いて無言でハンドルを握った。

 スイの優しさに甘えて見てみぬふりをしていたけど、好きな人と離れて毎日手の掛かる自分の世話をする彼の気持ちを置き去りにしてた。
 毎日苦しめてた。
 顔を見るのも嫌になるほど嫌われちゃったのは当たり前だ。

「…リハーサル抜けて来たから戻る。そのまま会場入りするから、明日伝えておいた場所に勝手に来てくれ。」
 サキを玄関に置いてすぐ家を出る彼に、もう謝ることすらできなかった。
 それなのにスイは去り際に、
「怒鳴ってごめんな。」
 と優しく言って出ていく。
 誰もいなくなった扉を見つめて泣きながら、言えない気持ちを心の中でずっと唱えていた。

 ねえ、スイ。ごめんね…、ごめんね…。
 優しいあなたの気持ちを利用してごめんね。
 甘えて、浮かれて、迷惑かけてごめんね。 

 好きになって…、ごめんね。
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