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飼っていたペットに飼われています。
第61章 理想の男(スイ目線)
 ああ、また一晩中泣かせたな。
 開演前のステージの袖から、彼女の腫れぼったい目元を確認して後悔する。

 コテージで過ごしたあの日々を経て、俺の想いを確認したのが面白いのか最近のサキは試すようなことばかりしてきた。
 毎朝出かける前は洋服を交互に体にあてながら、
「ねえ、スイはどっちが好き?」
と聞いて、俺が選んだ方を必ず着て出ていくし、好きな男のタイプを聞けば、
「それは…、優しい人だよ。スイ、みたいな…。」
 と顔を赤らめるし。
 その癖に、俺を誘惑したあの日を最後に誘ってくることもない。

 名前を出すのも憚られるあの嫌な男と結婚しようとしていたぐらいなんだから、元々優しいやつが好きなんだろう。
 サキの許しが出るまで手も出さない、車ですぐに迎えに来るような男が。
 そんなお前の理想に必死に近づこうとする俺の気持ちをからかうなよ。
 毎晩、可愛い寝顔見てめちゃめちゃにしてやりたい気持ちを堪えて離れてんのに、好きでもない男にベタベタ触らせるなよ。
 それで怒れば「スイのこと考えてた」ってなんなんだ。潤んだ目でごまかして逃げようとするなんてあんまりだろ。
 こんなことくらいでサキを好きな気持ちは変わらないけど、最近のサキはあまりに意地悪が過ぎる。
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