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飼っていたペットに飼われています。
第27章 私が知らない彼のこと(サキ目線)

スイが帰る前に家で再生してみると、英語で何を歌っているのかはわからないが、ハスキーなスイの声が耳に心地良い。
どんなことを考えているのか知りたくて、歌詞カードを見ながら少しずつ翻訳してみると、文字にするのも躊躇われるセクシーな曲も多かったが、サキは波の音から始まるある曲が1番心に残っていた。
"愛する者と別れ、その気持ちを封じ込めるために一人川から海を揺蕩い遂には暗い海底まで来たけれど、たまに射し込む月の明かりを感じては彼女を思い出して想いが増し、忘れられない"
という内容で、バンド名と同じ『DEEP BLUE』という曲だった。なんだかすごく胸を打たれる。
もうひとつ、アルバムの最後にドキリとするタイトルを見つける。
『To my dear PET(親愛なる俺のペットへ)』
という曲だ。
"お前が手に入らないから、俺の気持ちが伝わらないから、自分はペットを飼うことにした。従順で可愛いペットだ。毎日刺激的なアメとムチをやるから、早く自分の元に堕ちてこい"
そう訳しながら、スイには誰か好きな人がいて、その人が手に入らないから自分を代用しているのだと気づいてしまった。
すごく悲しくて傷ついて、涙が溢れるけど、それが何故だかわからない。
ダメな飼い主はいらないからと出ていくスイに縋って、ペットになると志願したのは私じゃない。側にいてくれること以上に何を望んでいるの?
自分の心すらよくわからなくなってしまった、とサキは自嘲ぎみに泣き笑いした。

