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飼っていたペットに飼われています。
第32章 すれ違う心(サキ目線)
「ほら、起きて。さっさと支度して。」
 軽く頬を叩かれて意識を取り戻した。衣服とティッシュを渡され、のろのろと身体を起こす。あちこちが痛かった。
 太ももを伝って逆流してきた温かい液体を拭い、衣服を身に着けていくサキを見下ろしながら冷たい目でスイは言った。
「俺はお前と違って1度飼ったペットは一生面倒を見る。2度と馬鹿な考え起こすなよ。」
 そして、もう1度扉を開ける前に振り返りサキの首を伝う血をベロリと舐めながら
「永遠に逃さないから。」
 とトドメのように囁いた。


 ようやく楽屋に戻ってきたスイを見て、メンバーが声を上げかける。
「おーいSUI! 何処言ってたんだよ、探し…。」
 続いて手を引かれて入ってきた少女を見て、空気が凍った。
 乱れた髪と衣服に泣きじゃくって崩れた顔。知人と会うと言ったまま開かないリハーサル室。何があったのかを全員が察した。
「ちょっと…。何やってんだよ、お前!」
 思わず1人が立ち上がったが、スイの発する只ならぬ雰囲気に手を止める。
 一触即発の空気を感じてサキが慌てて声を出した。
「けんか…ケンカしちゃって。疲れてるのに私が嫌なこと言って怒らせちゃったのがいけないんです。皆さんをお待たせしてしまってすみません!」
 頭を深く下げたサキの首筋にうっすら血が滲んだ噛みあとが見えた。
「いやいやいや…、そんなレベルじゃないでしょ。合意、じゃないよね? これ絶対…。」
 顔を見合わせるメンバー達にサキは慌てて続ける。
「ほんと、話し合ってただけで何もないですから!」
「でも…。」
 困惑するメンバーを一括するように低くスイが言葉を発する。

「本人がこう言ってるんだから何もない。あと、次の打ち上げこいつも連れてくんで。」 
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