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飼っていたペットに飼われています。
第48章 五感(スイ目線)
 もっとこの鼻が利けばいいのに、とその日は何度強く思ったかわからなかった。

 わずかに残ったサキの匂いは大学に向かうのと反対のホームで途切れていたが、念のためサキの通う女子大まで行って彼女が今日ここに来ていないことを確認する。
 胸の不快なザワつきが止まらない。
 何もせずにはいられなくて夜の街をひたすら走り、彼女の手掛かりがないかを探しながら、見たこともない神とやらに頭の中で何度も祈る。
『どんな状態でもいい、無事にサキを返してくれ。今度はちゃんと大切にするから…!』


 だが、俺は天邪鬼だ。
 ようやく戻ってきた愛しい彼女を強く胸に抱いたまま、数分前に誓った気持ちが急速で冷めていくのを感じて静かに問い詰める。
「…何があった?」
「侑斗くんに会ってたの。」
 意外にもあっさりと認められ、動揺する。
「ちゃんとお別れしなきゃって思ってたんだけど、スイに言ったら余計な心配かけちゃうかなって思って。嘘ついてごめんね。」
「……なんの、ために?」
「スイ、あの人嫌いだったみたいだからもう2度と会いませんって話に行ったの。叶わない一方的な気持ちで毎日を過ごすのって辛いもんね。私の気持ちを話したらちゃんとわかってくれたよ。…だけど、そのあと海外から戻ってきた叔父さんと叔母さんに偶然捕まっちゃって。地下にある電波の入らないレストランでご飯食べてたからスイにも連絡できなかったんだ。」
 嘘だ。食べ物の匂いもその2人の匂いもしない。その代わりお前からするのは…。
「本当に"それだけ"だよ。次からは絶対気をつけるね。」
 殺したいほど憎い男の涎が混ざった唇で滑らかに嘘を吐き続けるその顔はいまどんな表情をしている?
「ねえ、もういいでしょ? なんか汗かいちゃった。シャワー浴びてくるね。」
 弱まった俺の腕から抜けて微笑む知らない女の顔はいつもと変わらないように見えた。
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