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飼っていたペットに飼われています。
第48章 五感(スイ目線)
 流れる水の音を確認すると、トイレに駆け込む。
 サキが近くにいる間、鼻を刺してくる酷い臭いをずっと我慢していた。胃の中のものを全て吐き出す。
 改めて五感を研ぎ澄ませ、冷静に分析する。

 口や胸からはあの男の涎と手の脂のニオイ。下半身からはサキから溢れた大量の愛液と潮の匂い。そこに混ざる甘ったるい嫌な香りは何かわからないが、最も強く立ち上る最悪なニオイは精液で間違いないだろう。

 俺を騙そうとする強い意志が宿った目元からは嫌がって泣いた様子は感じられなかったが、やや潤んで焦点があっていなかった。いつも快楽を極めたあとに見られる兆候だ。

 2度と会わないと別れる男女がすることじゃないコトがあったことは認めざるを得ないんだろう。 
 でもなぜ? 俺には彼女の気持ちがわからない。
 最後だからと懇願されて流されて身体を開いてやったのか?
 いま何を考えてる? サキ。

 探るようにシャワーの音に耳を傾けると、所々に嗚咽が混ざっているようだ。
 あの男ともう会えないのが泣くほど辛いのか? 引き裂いた俺の元に戻らなければいけない屈辱で涙が止まらないのか?

 耳にこびりつく憎い男の勝ち誇ったような声が、再び何処かから聞こえた気がした。

『サキはお前が恐くてずっと困ってたんだ。サキのためを思うなら黙って消えてやるのが本当の愛じゃないか?』
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