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飼っていたペットに飼われています。
第51章 DEEP BLUE 下(スイ目線)
 冷たくなったサキを胸に抱きながら、震える声で叫んだ。
「なんでだよ…。なんでこんなことになるんだよ…!」
 責めるように追ってくる嫌なニオイを振り切るように、サキを置いて逃げ出したあの日から今までの記憶が走馬灯のように駆け抜ける。


 サキがどこに居るのか、何をしていたのか、悲しんだり苦しんだりしていないか、すぐに気付くことが出来る優れたこの五感をずっと便利だと感じていた。
 それが、今は恨めしくてたまらない。

 すべて忘れたいと強い酒を浴びるように飲んでも全く酔うことができない。むしろ代わる代わる寄ってくる女どもの不快な香水のニオイと媚を売るような甲高い声にイライラして突き放せば、
「お兄ちゃん勿体無いなぁ〜。ほら、オジサンがご馳走してあげるから一緒に飲もう。」
 と口から腐った酒のニオイをぷんぷんさせながらこちらを舐めるように見ていたジジィが寄ってくる。お前、俺をダシに女抱きたいって考えが丸わかりの目なんだよ。
 こいつら全員、自分の欲のことしか考えてない。
 俺がずっとなりたいと願っていたのは、こんなに汚い生き物だったか? 

 死体を喰ってまでヒトに近づけた紛い物の体でどんなに交わっても、種族が違えばサキに家族を作ってやることもできない。
 「意外とできないものなんだね。」とお腹を触りながら毎月寂しそうにトイレから出てくる彼女に声を掛けてやることもできない。

 俺は何のために生きている?
 あのまま海底で眠っていれば彼女にこんな想いをさせずに済んだのに。

 浮くことすら出来なくなった腐った肉と骨を食べてまで手に入れたこの腕で、サキを守ることすら出来なかった"ヒトモドキ"の自分を呪いながら、どこまでも歩き続けた。
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