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飼っていたペットに飼われています。
第53章 君の声(スイ目線)

『綺麗な満月…。』
ーーああ、そうだね。光が眩しすぎていつもより強く君を思い出すから苦手だよ。
自分が作り出した幻の彼女の声に心の中でそう答え、いつものように外に出て歩き出す。
『〜〜〜♪』
ーー『DEEP BLUE』か。俺がサキを想って初めて作った曲なんだ。気に入ってもらえて嬉しいよ。
『〜〜〜〜♪』
大好きな声がどんどん近づいてきた。優しいサキの香りもしてくるようだ。ここまで来るともう末期だな。
『〜♪ パシャ… 〜♪ バシャ… 〜〜♪ バシャ…。』
口ずさむ声に震えが混ざり始め、合間に水の音がする。
何かがおかしい。
まさか…!
声が止まって静かになった。嫌な予感がして白い雪の上を走り出す。
嘘だろ? 頼む…、間に合ってくれ!
目をこらして木々の間に見え隠れする湖をよく見ると、遥か先に月光を受けて輝く水に浸かった美しい黒髪が見える。
「…サキ……‼」
ーーバシャン…。
ゆらりと揺れた少女が静かに水飛沫を上げて倒れた。
全速力を上げて、水の中を掻き分け水面に浮かぶ彼女を抱き上げる。
「サキ‼ サキ!!! しっかりしろ‼」
胸の中の愛しい人は冷たく、青白い顔が小刻みに震えている。
そのまま急いで来た道を引き返した。
「なんでだよ…。なんでこんなことになるんだよ…!」
コテージに入り、すぐに暖炉に火をつける。
車で病院までどれくらいだ? いや、それじゃ間に合わない。
彼女の濡れた服と自分の服をすべて脱ぎ剥がし、裸で体を密着させながら暖炉の前で毛布に包まって必死に自分の体温を分け与えた。
しかし、既に震える力もなくなり、呼吸が弱まって筋肉が硬直し始めている。
彼女の命の火が小さく消えていくのを感じて叫び続ける。
「サキ‼ サキ…‼ 頼むよ、しっかりしてくれ‼ 逝かないでくれ…‼」
ーーああ、そうだね。光が眩しすぎていつもより強く君を思い出すから苦手だよ。
自分が作り出した幻の彼女の声に心の中でそう答え、いつものように外に出て歩き出す。
『〜〜〜♪』
ーー『DEEP BLUE』か。俺がサキを想って初めて作った曲なんだ。気に入ってもらえて嬉しいよ。
『〜〜〜〜♪』
大好きな声がどんどん近づいてきた。優しいサキの香りもしてくるようだ。ここまで来るともう末期だな。
『〜♪ パシャ… 〜♪ バシャ… 〜〜♪ バシャ…。』
口ずさむ声に震えが混ざり始め、合間に水の音がする。
何かがおかしい。
まさか…!
声が止まって静かになった。嫌な予感がして白い雪の上を走り出す。
嘘だろ? 頼む…、間に合ってくれ!
目をこらして木々の間に見え隠れする湖をよく見ると、遥か先に月光を受けて輝く水に浸かった美しい黒髪が見える。
「…サキ……‼」
ーーバシャン…。
ゆらりと揺れた少女が静かに水飛沫を上げて倒れた。
全速力を上げて、水の中を掻き分け水面に浮かぶ彼女を抱き上げる。
「サキ‼ サキ!!! しっかりしろ‼」
胸の中の愛しい人は冷たく、青白い顔が小刻みに震えている。
そのまま急いで来た道を引き返した。
「なんでだよ…。なんでこんなことになるんだよ…!」
コテージに入り、すぐに暖炉に火をつける。
車で病院までどれくらいだ? いや、それじゃ間に合わない。
彼女の濡れた服と自分の服をすべて脱ぎ剥がし、裸で体を密着させながら暖炉の前で毛布に包まって必死に自分の体温を分け与えた。
しかし、既に震える力もなくなり、呼吸が弱まって筋肉が硬直し始めている。
彼女の命の火が小さく消えていくのを感じて叫び続ける。
「サキ‼ サキ…‼ 頼むよ、しっかりしてくれ‼ 逝かないでくれ…‼」

