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飼っていたペットに飼われています。
第54章 天国(サキ目線)
 ふわふわして温かくて眠ってしまいたいのに、誰かが自分を呼ぶ声がする。 
 誰だったかなぁ? ハスキーで大好きなこの声。

 薄目を開けて確認する。
 ーーああ、やっぱりスイだ。
 ギュってしてくれてる。だから温かいんだ。
 私、あんなに悪いこと沢山しちゃったのに天国に来れたんだ。
 天国っていいところだな、安心したらまた瞼が重くなってきちゃった。
 「…‼ …サキ‼ ダメだ‼ 逝くな…‼ ………‼」
 もう、スイは天国でもうるさいなぁ。どうしてダメなの?
 あれ? ほっぺが濡れてる。
 泣いてるの? 
「馬鹿‼ 何でこんなことしたんだよ! お前幸せなんじゃなかったのかよ…。」
「……しあわせ…じゃ…ない…。」
 ムッとして思わず言い返したくなった。
「…サキ!」
「…スイが…いないと…、ぜんぜん…しあわせじゃない…。」
 ギュッと更に強く抱きしめられる。
 私いま怒ってるのに。やっぱりスイには負けちゃうなぁ。



 意識がハッキリしてくると、怒り心頭のスイにすごく怒られた。
「馬鹿! 大馬鹿‼ お前がここまで馬鹿だって思わなかった!」
「だから、違うの。月を触ろうと思っただけなんだってば…。」
「こんな雪降ってんのに意味わかんねぇ! ありえない‼ 馬鹿サキ‼」
 ……それは耳が痛い。
「ごめん…。」

 それでもサキの手をそっと握り続け、足先をつけた洗面器のお湯を何度も変えてくれるスイは優しくて温かくて、やっぱり大好きだって改めて思った。
 スイのいるこの世界に帰ってこれて本当によかった。
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