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イケないキミに白い林檎を
第9章 元彼
「……すみません、また掛け直します」
その人に気付かれないように声を小さくしてソラ先輩との電話を切った。
あっちはスマホを見ていて、まだ私の存在に気付いていない。
どうしてもその人の近くを通らないと改札に行けないため、離れて横切ろうとした。
早く、一刻も早く、ここを通り過ぎれば……
「おい、風子」
「……っ」
ずっと聞きたかった声が聞こえて私は足を止めた。
複雑な気持ちで立ち止まっていると、彼は何もなかったような態度で傍に来てくれた。
「久しぶりだな」
「颯太……」
もう二度と会いたくないと思っていた。
その方が不安定になったこの心を乱さなくて済むから。
でも心の奥底では会いたいと思っている矛盾した気持ちも存在していて心が大きく揺らぐ。