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イケないキミに白い林檎を
第20章 ふたりの嫉妬と秘密の関係
「易々と行かせるつもりはないけどね。でも颯太は精神的に疲れてる時だと思うから。少しでも力になりたいんだ」
素っ気ない相槌を打っていたように見えたけど、颯太の悩みをきちんと聞いて考えてくれていたんだ……。
「今の颯太を救えるのは、俺じゃなくて乙羽さんだと思うから。……頼むよ」
従兄弟のために、私に頭を下げた彼氏。
恐らく、颯太が私に会いたがっていたのを知って今日は誘ったんだろう。
こうなる事も予想されていたとしたら悔しいけど。
颯太を救いたいと言う意見が一致して、頼られた。
ここまできたなら頑張るしかない。
「分かりました。引きずり出して、元気付けてきます。まったく、ソラ先輩は本当にお人好しですよね」
「いいや、身近な人の辛い姿をもう見たくないだけ。だから救いたいのは俺の我儘であって、……償いなんだ」
一体、何の償い……?
冷たい風が吹き抜けて髪を揺らす。
夕暮れに染まる空を寂しそうに見上げた彼にその重みのある言葉の理由を聞くことはできなかった。
「あと、ひとつだけ乙羽さんにお願いしたいことがあるんだけどいいかな――」