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イケないキミに白い林檎を
第22章 Reminiscence
「どうかしたの?」
機転を利かせたり、大人っぽく振舞ったり、意図も簡単に完璧な恋人を演じる。
でもそれが私にとっては差を作る原因になっていて。
どんなに頑張っても欠落している私は同じことをしてあげられない。
迷惑を掛けてるみたいでなんだかむしゃくしゃする。
「年下だからって子供扱いしないでください!」
「そんなことは……。……乙羽さん?」
視線さえ合わせず、捨て置くようにソラ先輩の前を通り過ぎる。
ズキッと心を痛ませながらも優しく気に掛けてくれる彼に冷たく接する私。
「一人で帰れますから着いてこないでください」
背を向けたまま最後に言い残し、早足で帰り道を口を尖らせて歩く。
冬の寒さは残るけど日没までの時間が伸びてきて、家に近付く頃はまだ夕陽が沈まず残っていた。
初めてしてしまった……。
穏やかなソラ先輩とは喧嘩なんてしないと思っていたのに。
喧嘩と言うか、私が一方的に怒って逃げ出しただけなんだけど……。
念のため、後ろを振り返ってみる。
だけど私の影しか見当たらなくて他の人の姿はなかった。