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イケないキミに白い林檎を
第29章 in flore
「でも、秋は私の運命の人じゃないですから……――――」
思うように踏み出す力が出ないまま、電車に乗るために駅へと向かう。
発作も起きた上に寝不足のせいもあって体が思うように動かない。
視界もぼかしが入っているみたいではっきりとしていなくて、他の人にぶつからないのがやっとだった。
「はぁっ…、はぁ……」
一旦どこかに座って休みたいけど、駅内は人が多くて座る場所もない。
だけど電車にさえ乗れば座ることができそうだと僅かな期待を寄せてふらつきながら歩を進めた。
「っ……!?」
通路からホームへと続いている長い階段を下りようとした時、踏み外して足元がふわっと宙に浮かぶ。
足元を気にする余裕もなかったから注意不足だった。
落ちる……!―――――
全身から力が抜けたようにヒヤッとして虚ろだった目を見開く。
大きな怪我をすると頭に過ぎった瞬間、誰かに体を支えられた気がした。
「――――まったく。危なっかしくてキミのことを放っておけないよ」