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第29章 in flore

前にも似たような感じに助けてもらったことがあったから幻聴かと思った。

でも階段から落ちなかったことを考えると、これは現実の出来事。

後ろから体を引き上げられてから静かに手を離される。

助けてくれたその人が誰なのか、振り向く前に分かっていた。



――――ソラ先輩……！

名前を呼びたいのに発作のせいなのか、喉が詰まっているように苦しくて声が出ない。

対面してから喉元を抑えて話したい素振りを取ると今の私の状況に気付いてもらえた。


「また体調が悪くなってしまったんだね。家まで送って行く？」

優しい目を向けてくれたけど、マスクをつけているから口元は分からない。


どう思われているのか不安もある。

でも家には帰りたくないと伝わるように首を横に振ってから、話がしたいと願うように目を合わせた。