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イケないキミに白い林檎を
第4章 独占
何も考えられないまま歩いて、やっとアパートから遠ざかれる場所に着いた。
通勤ラッシュ以外は閑散としている駅。
もう二度とここに来る事はない。
次の発車時刻までまだ時間があったので待合室に向かった。
「早かったね」
声がした方を向くとソラ先輩が座っていた。
読んでいた文庫本を畳んでから私の所へやってくる。
「あっ……。うっ…、ううっ……、っ……」
苦しくて言葉に詰まる。
抑えきれない悲しみで頭の中がいっぱいで、何から話したらいいのか分からない。
「大丈夫。見れば分かるから」
否定され、捨てられた私をソラ先輩は優しく抱き寄せてくれた。
腕に包まれた時、重かった心がすうっと軽くなる。
苦しみから救ってくれるような温かさで安心できる場所。
その温もりに浸っているうちにどんどん感情が込み上げてくる。
「っ……、別れたくないのに……。こんなのってっ……」
受け止めてくれるソラ先輩の前でたくさん涙を流した。
ストーカーでナイトの先輩が、今はいてくれて良かったと心底から思う。