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第2章 黒電話




叶和が近づいていくたびに、どうも中にいる人が一人ではないだろうと漏れ聞こえて来る音でわかった。

数歩進んで、心配することはないと、そう言う趣向の人もいるのだな、と踵を返してパウダールームから出ようと出口に向かう。

その時、声を押し殺していたが耐えきれなく漏れ出た女性の声がはっきりと叶和の耳を捉えた。



圭吾



女性はそう言った。

叶和は、知っているその名に耳を疑ったが確認できるはずもなくそのままパウダールームから出た。

カレの元へと帰り、席に座る。

先程まで人がいた、カウンターにめを移した。

グラスが二つ置かれていた。


やっぱり圭吾だったんだ


そのことに、少なからずショックを受けている自分に叶和は気づくが、何に対してのショックかはわからなかった。



「どうかしたのか」



組み敷いていた叶和を解き、カレが煙草に火をつけながら聞いてきた。

行為の後の定まらない思考で、

別に

と応えながら店をでるときの出来事を思い出していた。

結果からいえば、パウダールームにいたのは圭吾だった。

そして、叶和のこともわかっていた。

パウダールームに行ったあと少しして、カレと店を出ようとしたところで、パウダールームから圭吾と女性が出て来たところを見てしまった。

気まずいと思いつつも、相手は叶和がパウダールームにいたことは知らないだろうと何気なく圭吾に視線を合わせた。

圭吾は、叶和と視線がぶつかったその刹那、

ニヤリ

と意味アリ気な視線を送り直ぐに優しい表情に変え、その視線は叶和ではなく、隣の女性に移っていた。






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