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コーストライン
第1章 ベルが鳴る
県中部から西部に通じる海沿いのその道。
目的地は いつもの人気のない 駐車場。
隣接する 自販で 微糖のコーヒーを買い、ひと息入れる。
月あかりの漆黒の海を 目の前に、さざ波の音が 心に染込む。
程なくして、
「帰る」
「もう、良いの」
「ん、大丈夫」
そう告げ、彼女が踵を返し車に戻る。
彼は 間を起き、ゆっくりと 彼女の待つ 車に戻った。
彼女は 何があったかを語りはせず、彼もまた 聞きはしない。
夜が空けきれぬ前に、家に着いた。
ジリリィィーン、ジリリィィーンーーー。。。
玄関の靴箱の 上に鎮座する、昔ながらのダイアル式黒電話。
出掛ける前から 鳴っていた。
父の趣向で、買い替えをしないその電話。
その父も、今は単身赴任で この家には 居ない。
単身赴任の 父を追って、彼女が 就職したのを期に、母は 父の元へ。
弟は、その期を境に カノジョと 半同棲中、たまの帰宅のみ。
殆ど 携帯で 済ませているので、そのままにしていた、黒電話。
「いつまで、放置する気?」
「そのうち」
「あっそ」
「おやすみ」
彼は、彼の所用している部屋へ。
ーーここら辺が、引き時なのかーー
電話線を抜き、階段をあがる。
後、数時間で出勤時間。
そのまま、ベットに滑り込み 目を閉じた。