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コーストライン
第5章 be ru ga na ru
行きに来た道を叶和は、またスタスタと戻っていく。
その数歩あとを圭吾は、携帯を扱いながら歩調を合わせながら歩く。
メールを見ると、
ーーいつもの場所にいますーー
と、メールが入っていた。
ーー後、十五分ぐらいで行けると思うーー
圭吾はそう返信して、携帯をポケットに仕舞う。
浜辺から灯台付近に近づく。
その横に面した駐車場に、一台の赤い車を発見する。
車内には人影が携帯を扱っているために、淡い光が漏れていた。
運転席にいる人影が、不意に顔を上げ、車外へと視線を移す。
道の街灯下を歩いていた圭吾と視線があい、携帯の光に照らされた浮かび上がった赤い口元が弧を描くのを確認したが、圭吾は視線を外し、先程より先を歩いている叶和の後ろを歩調を変えずゆっくりと歩いていった。
屋台に戻ると、マリのアニ達が帰ってきてたようで騒がしくなっていた。
支払いは終わっていたようで、叶和が戻ってきたところで帰るらしい。
「ありがとう、少年」
「俺、少年って名前じゃないですけど」
「バイバイ、ごちそうさま」
そう言い、マリの方へ行き車に戻っていった。
「圭、ありがとな」
「あ、真さんこの後俺ちょっと出かける」
「鍵持っていけ、あんまり遅くなるなよ」
「わかっている」
叔父は多分築いているだろうがそれだけ言い、仕事に戻る。
圭吾はパーカーのポケットに鍵が入っているのを確認して、赤い車が待つ場所へ、叶和達の乗った車はまだ走り出さず、車内で何やら兄妹が言い合っているのが見て取れた。
車の横を通る時、叶和と目が合う。
叶和は意味ありげに微笑み、顎で灯台の方を示す。
圭吾も微笑みながら、軽く会釈をしてそのまま通り過ぎた。