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コーストライン
第5章 be ru ga na ru
人並みを掻き分けた人影も疎らになった場所に彼女はいた。
海を眺めながら。
腰まで伸び真直ぐな 黒髪を 潮風に靡(なび)かせ
大きめの、サングラス越しに 沖をみすえていた。
近づくと、潮風に微かにウッド系の香りが混ざる。
サマーニット地の ロングパーカーを羽織、その裾からは 程よい筋肉をつけた 健康的な 太腿が。
和希が声をかけ気づいた彼女がサングラスを外し圭吾を見る。
化粧気はないが整った顔。
挨拶が終わると、サングラスをかけ圭吾には興味がないというように和希と近況を話す彼女。
彼女に興味が湧くと共に、初対面であった気がしない。
圭吾を気にするでもなく姉弟は話を進めていく。
帰ろうと向きを変えた叶和から、先程は微かだったがウッド系の香りがしたと共に、あの日の夜に嗅いだシャンプーの香りを思いだし、そのマイペース加減にあの日一回だけあった彼女だと確信した。
確信したからといって、圭吾の中で、何かが変わることもない。
叶和は和希の姉であって、同居人。
お互い生活のリズムも違うので、干渉せずそれなりに生活をしていた。
たまに、叶和が夜遅く帰ってきているようだが、それはアチラも大人だから野暮な詮索はしない。
圭吾は相変わらず、一定の彼女を作ることはせずに、後腐れのない女性を選んで程々に楽しんでいた。
バイトが終わり家に帰ると、今日はそのたまにの日であることは、外灯が付いてない家を見て叶和が帰っていないことがわかる。
鞄から鍵を取り玄関に入ると、電話が鳴り出した。
家の持ち主がいないので、そのまま圭吾は放置していた。
程なくして切れて、また掛かってくるを数回繰り返し、電話は大人しくなる。
圭吾気づいたその日からたまにそうゆう電話があることに気づくが、家主がいないことには同居人がとやかくする必要もないので電話があった日には電話があったとだけ書いたメモを残すようにしていた。