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第5章 be ru ga na ru




バイトまで、まだ時間があった圭吾は、いつもは行くことのない駅ビルに時間を潰すために入った。

入ったフロアーには、圭吾には馴染みのない、でも圭吾に纏わりつく女達には馴染みのある、商品、店舗が連なっていた。

手っ取り早く、エレベーターに乗り書店で時間を潰そうと、フロアーの奥にあるエレベーターのところに行こうとしたところで、圭吾は歩みを止めていた。

時間にしては短い時間、だが長い時間のようにも感じた。

某有名化粧品会社の店舗。

普段見知った人がカウンターで、接客をしていた。

普段の彼女からは見ることのない化粧毛のある顔。

そのメーカーの質を損なうことのない品のあるメイク。

普段の彼女からは見ることのない艶のある黒髪をきっちりと纏められ、そこからの首筋のライン、お客様に向けられた仕事用だとわかってはいても向けられる柔らかな微笑みに、圭吾の胸がピクンと高鳴った。

彼女が不意にお客様から視線を外したとき、圭吾はハッとして止めていた歩みを進めた。

エレベーターに乗り、書店に行く間、彼女がいた店舗がバイト先のオーナーの奥さんが使っているメーカーだと、圭吾は思い出す。

バイト先のオーナー、それは圭吾の叔父の真だった。

真が結婚することにより、圭吾は家を出ようとしていたところをちょっとしたきっかけでで和希の家に同居することになった。

そういえば、真の奥さんがこの間家に行ってたとき、真が買い物に付き合ってくれないって嘆いてたな、と思い出し圭吾はちょっとした悪戯を思いついた。

今度のバイトの休みに、真の奥さんに連絡してみよう。

圭吾はそう決めた。




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