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手を繋ごう〜愛憎II〜
第24章 萌の部屋
ドライヤーで髪の毛を乾かし、萌が

「ありがとー」

と言ったあと、

「こっちこっち」

と、手招きをする。

仏間にある仏壇は開かれたまま。

(ああ…おじさん、こんな顔をしていたんだっけ…)

と、小さな写真立てに飾られた、端正な顔付きの萌の父親の顔を見て、朧げになってしまっていた萌の父親を思い出す。

ーー11年前

5歳の時、萌が笑顔で

「パパ!!お友達連れて来たのっ!!」

と届かないベッドの高さに、萌の父を見ようと、ぴょんぴょん飛び跳ねながら、言った萌に

帽子を被った萌の父親がベッドから顔を出し

「萌…パパは具合悪いんだから…」

と言い掛けている時に

「おじさん!遊ぼ!一緒にお絵本読んで!」

と割り込んだ。

むくりと起き上がった気難しい顔をした萌の父親、悠治は、誠の姿を見た時、ふと悲しそうな表情になった。

恐らく、同じ病に苦しんでいると言う事を悟ったのだろう。

無菌室でたまに一緒の時があるのか、隣の部屋から罵声が飛び出し、小さい萌と萌の母親が泣いて歩いてるのを、病室のドアから見えた時

(あの子可愛い…)

不謹慎ながらも、泣いている萌に一目惚れをした誠は、しつこいくらいに、隣にいる人はどう言う人なのかをゆうに毎日の様に聞いた。

病室が一般病棟に戻った後も、

(あの子はどこにいるんだろう…)

と、重たい体を引きずりながら病院中を探した。

そして、ようやく見つけた萌。

萌と遊びたい一心だった。

萌のお父さんがどう言う人なのかも知りたかった。

「ねぇねぇ、おじさん、遊んで遊んでー!!」

と、よいしょよいしょと大人用のベッドに登ろうとした時、

ふわり…

温かい手が誠を抱き上げた。

「ぼく、お名前は?」

小さな病室の訪問者の、帽子を被った誠の頭を撫でて、悠治は誠を見つめて言う。

「かわなかまこと、5歳です。」

と言う誠に

「うちの萌と同い年だ。良い友達出来たな、萌」

と、悠治は萌も抱き上げてベッドに乗せた。

誠と萌は顔を見合わせ

「「……えへへ」」

と、嬉しくて笑う。

きっと萌はもっと嬉しかっただろう。

大きくなった誠はそう思う。



目に優しい光を持つ人だった。
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