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手を繋ごう〜愛憎II〜
第24章 萌の部屋

「ゆうちゃん!今日も高橋さんのトコ行く!」

「まこちゃんは高橋さんが大好きねぇ」

ゆうと手を繋ぎながら、病院の廊下をゆっくり歩く。

「おっ!まこちゃん、また来たか!」

萌と早苗がまだ見舞時間帯ではない時に、一人退屈そうにしていた悠治は、誠の顔を見て頭を撫でて優しく笑う。

ゆうに渡されていた絵本を悠治に

「うん!今日はこのお絵本読んで!」

渡す。

ふわり…と、優しい手で抱き上げられ、ベッドの上で

「どれどれ?むかーしむかし、あるところにおじいさんとおばあさんがいました。……」

絵本を何十冊読んでもらったか分からない。

「まこちゃん、これなんだ?」

「かにさん!」

「おー!かにさんかぁ〜まこちゃん折り紙上手だなぁ」

温かい手で何度頭を撫でてもらったか分からない。

何故か、重たい体が和らぎ、笑顔でいられる時間が増えた。

萌の父も同じようだった様で、誠の頰を軽く触りながら、ある日突然、

「まこちゃん、ありがとな…」

と言われた。

誠はくすぐったさを覚えながらも、

「おじさんとお話するのが楽しいから、おじさん大好き!」

と、ぎゅっと萌の父を抱き締め、ちょうどその時病室に入って来た萌に

「ずるい!萌もー!!」

と、言われたものだった。


その一年半後、誠にドナーが見つかり、骨髄移植をして、無菌室で安静している時に誠の父は逝った。

あの時のショックを未だに覚えている。

歳を取る毎に、何故自分だけ助かったのか…そんな風に、思った事もある。

体の重たさなどが無くなっても、何故か死の恐怖だけは拭えなく、頭の中がぼんやりとした日々もあった。



けど、

(こいつが居てくれるから、俺は…)

隣で一緒に手を合わせる萌を意識しながら、

(見守っていて下さい…)

と、心の中で呟いていた。



「さっ!まこちゃん!まこちゃんもお風呂入って来て!」

と、萌は言う。

誠は、座ってもう少し語りかけていたい気持ちはあったが、

(また明日…)

と話し掛け、仏壇を後にした。
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