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手を繋ごう〜愛憎II〜
第27章 静かな日常と影
「おじさん…とは、高校時代からの付き合いなんでしたっけ?」

早苗は懐かしむように

「そう。三年間付き合ってね。私も大学受験するつもりだったんだけど、萌いる事知ったから、辞退したの。いずれは結婚するつもりで付き合ってたから」

「そうだったんだぁ…」

と、萌。

「病気で苦しんで…なんて言うか…」

と言いかけた所で、ハッとし、

「そういや、晩御飯なににするー?」

と、台所の中身を確認する早苗の後ろ姿を見て、

(もしかしたら、おばさん、おじさんのこと、忘れられてないのかな…)

と、一人思っていた。


今晩はカレーの食卓。

萌は早苗を手伝っていて、誠は仏間に入り、仏壇にある萌のおじさんの写真をじっと見ていた。

(萌、雰囲気が似てるって言ってたけど、俺がおじさんの真似をし始めたんだ)

誠は回想する。

「萌ちゃん、おばさーん!」

悠治の病室に入って来たのを誠が出迎える。

なんだか不思議な光景だが、悠治に絵本を読んでもらっていたのだ。

「いつも悪いな、早苗」

そう言う悠司は、いつも誠に見せるような顔ではない、愛おしいそうな表情をしていた。

「良いってことよ。それより着替え持って来た。ドレッサーの中に入れとくわね」

と言う早苗に

「ああ…ありがとう…」

と、返す。

萌と二人顔を見合わせ、

「僕たち、僕のお部屋行ってるー?」

と、言うのに、早苗と悠司は、顔を赤らめて

「いや…その…お願いしてもいいか?」

と言う悠治。

誠はナースコールで看護師を呼び、早苗が萌を迎えに来るまで、一緒に遊んでいた。

病室だから、限りはあるけど、病室で遊んだ日々は誠にとって、すごく良い思い出だ。

ゆうに怒られるほど、話をするだけで笑っていた日々。

あの頃で、誠の萌に対する恋愛感情はもう既に固まっていた。




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