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第10章 萩原 義隆
マニキュアは、冷凍しても凍らないんだな…
どうでも良い雑学をひとつ頭にしまい、自らに覚えがない以上、これを入れたのは菜摘だし、彼女のことだから酔ってやった訳でもない。
何か意図があってのことだろう、と思い、再び氷の中に袋を埋めて麦茶に入れる氷を掴んだ。

麦茶で喉を潤していると、菜摘が風呂から上がってくる。乾かした髪をクリップで留め、パジャマの胸元から手でパタパタと風を送る仕草。湯上りの姿って何でこんなに色っぽいんだろうか。

「菜摘も飲む?」

コップを目の高さまで上げてみせる。

「あ!麦茶、まだ冷えてなかったでしょう?」

「氷入れたから。」

「じゃ、私も飲もうかな。」

頷いて菜摘のぶんのコップを出し、氷と麦茶を淹れて渡す。
美味しそうに麦茶を飲む白い喉、うなじに溢れる後れ毛も色っぽい。

菜摘は麦茶を飲み終えると、ダイニングのテーブルに陣取り、部屋から小さなケースを持って来た。

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