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第16章 芳川 翠 ー熱ー
てっちゃんの腕の中は暖かくて。

「きもちぃ…」

「人肌って、いちばん心地いい暖かさだろ?」

「うん…」

「何もしないから。寝な。」

「うん…薬、買ってきてくれたんでしょ…アレだけ飲もうかな…」

「まぁ、風邪薬なんて気休めみたいなもんだし、それよりゆっくり寝たほうがいいよ。」

「そうなの?」

「俺はそう思ってる。大体薬で治るわけじゃないじゃん。薬は、症状を抑えるためのもんだから。熱が高ければ熱を下げる、とか。痰が絡むときはそれを出やすくする、とか。喉の炎症を抑える、とか。その辺は確かに有効だろうけど、熱はウィルスを殺すために身体が熱を出してるのにそれを物理的に下げちゃうのはどうかな、って思うんだけどね。高熱が続いて下がらなくて…って状態なら別としてさ。今の翠は、たくさんの症状が微妙に出てて、熱が高くて寝られないとか、咳が止まらないとかでもないからさ。無理に抑え込まなくても栄養とって寝てれば自然治癒するんじゃないかと思ったんだけど。」
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