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第17章 田嶋 紗栄子
「…ホントだ。その通りだね…彼女の求める結婚相手は、僕じゃなかったってだけか…確かに今わかってよかったのかもしれないな…」

敬さんは、ハハ、と軽く笑って。
はぁ、と深いため息をついた。

「…私、敬さんのこと、好きですよ…」

敬さんは大きく目を見開いて、私を見た。

「仕事の姿勢も、優しいところも、穏やかな声も、綺麗な指も…全部。…彼女がいるの、知ってたから。ずっと黙ってました。…言うつもりも、ありませんでした。敬さんには彼女がいて、私の入る隙間なんかないって思ってたから…」

「…加藤さん…ごめん、ちょっとだけ…」

敬さんは、隣に座った私に身体を向けて、そっと私を抱きしめた。
私を抱きしめる敬さんの背中が、小刻みに震えてて。

「…っく…」

小さな嗚咽が聞こえた。私は…私も涙がこみ上げて。
鼻をすすって、ただ敬さんの背中をぎゅっと抱きしめた。

「私じゃ、ダメですか…?」

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