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第1章 井上 未玖
「…外泊は…」

予想した通りではあったけど、ハッキリ言われてしまうとちょっと恥ずかしい。

「アレ、外泊NGなお家?」

…そんなことも、ないけど。
前の彼とも何度かしたことあるし、友達のウチとかもある。
流石に無断だと心配するだろうし、連絡も入ると思う。
来た連絡に対して、今日は泊まる〜、とか。
スルーして朝帰りしたりしたら、きっと怒られる。
だけど、事前に両親に言っておけば、特に詮索されることもなかった。学生の時は、彼氏のウチに行く、とは堂々とは言えなくて、友達のトコに行く、と濁してたけど。
社会人になってからは、お母さんにだけ、伝えてた。
お父さんに堂々と、彼氏のウチに泊まりに行きます、とは、中々言いにくい。

私は少し俯いたまま、ふるふるとかぶりを振る。

「じゃ、その予定で。」

長野さんは、ウチの門が見える角まで来ると、周りをサッと見回して。
額に軽くキスしてくれた。

無言で軽く手を挙げ、踵を返す。

門の前で名残を惜しんでたら、インターホンのカメラのセンサーに引っかかって、ダイニングから見られてる可能性もあるから。

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