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第23章 田嶋 美佳

隆行くんのお家は、小学校の頃にご両親が離婚されてて。隆行くんはお父さんと住んでたから、お母さんと会うのは15年ぶりだと言っていた。
離婚の理由が、お母さんの浮気で。でも、当時小学生だった隆行くんには、その辺の事情の説明は何もなく。
ある日突然お母さんが出て行ってしまって、お父さんから、離婚したから、これからは2人で暮らす、と言われただけだったそうだ。
隆行くんは、お母さんに、自分より大切なものが出来て、捨てられた、という思いが強くて。
誰かを好きになっても、いつか自分の前から居なくなってしまうんじゃないか、っていう恐怖心が根底にあって、人を好きになれなかった、と言っていた。
そんな原体験になってしまったお母さんを恨んで。
お母さんなんか嫌いだった、だから、捨てられたって平気だ、って思い込むことで心のバランスを保ってたようなところがある。
本当はお母さんが好きなのに。
ていうか、お母さんのことを心から嫌ってる子供なんていないと思う。
基本的に、子供はお母さんのことが好きだし、そうじゃないと生きていけないから、子供は無条件で親を信じて頼るし、親は子供を護る。
だけど、ヒトは完璧じゃない。
大事なものを見失うことだってある。
一時見失っただけだったのだとしても、悪い条件が重なれば憎しみに発展してしまうことだってあるだろう。