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第28章 萩原 義隆 ー 過去編 ー
酔いがさめるまで付き合ってもいいが外では寒すぎて風邪をひく。
困って肩を揺さぶり再び声をかけた。

「及川?寒いし1人で乗れそうならタクシー止めるけど、大丈夫か?」

「イヤです・・・」

「え?」

「独りにしないでください」

一緒にタクシーに乗って家まで送れという事か?
まぁ、確かにその方が安心ではあるか…
彼女の家は何処なのだろう…ふと腕時計を見る。
時刻は午後22時を回ったところ。タクシーで彼女を送り届けたとしても、十分電車で帰れるだろう…
仕方ない、こうなったのも私に責任があるし、タクシーくらい付き合うか…と軽く溜め息をついた。

そんな私に彼女は。

「ずっと…一緒に居てください。お願いします」

私の首に両腕を絡ませて抱きついてきた。
驚きのあまり、慌てて肩を掴んで引き離す。

アルコールのせいか、うっすら染まった頰と、潤んだ瞳がやけに煽情的で。

「私とじゃ、ダメですか…?」

「及川。おじさんをからかうもんじゃない。タクシー拾うから、ナビできないなら免許証を出して。」

振り切るように強めに言った。

「イヤ…帰りたくない…」

及川は私の首に齧り付いたまま離れない。
夜22時のバス停。

人の目もあり、それ以上そこには居られなかった…
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